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　2021年の晩春に、手術入院することになりました。術後の枕辺のお供に、カズオ・イシグロの新作を持ち込みました。
　400ページあるけれど、手術前に読み始めたらあっという間に読了。

　不思議な肌触りの物語です。
　クララは人工親友（artificial friend/AF）というロボットです。少なくなった人間の子供のバディとして作られた人工知能。
　人間のバディとしてのロボットは、鉄腕アトムしかり、また神林長平のパブなどで創作されてきました。
　今は既に、iphoneのSIRIが早くそうなればいい、いや個人がオーバーロードに対峙するのは怖い、と本当に心配する時代となりました。
　クララ達AFは、古典的な、スタンダロンな人工知能です。

　今の文芸は近未来を舞台装置に使うことも多くなったので、この作品もSFとは言えない。近未来に写して現代社会批評も交えてあります。 様々な素材を含む、中編ではあるが長期的な視点を持つ、ロマンだろうと私は位置づけています。

　登場する人間たちの性格描写が希薄です。若しくは係わりを持ちたがらない現代人と話しているよう。
　濃厚な人間性は、機械的しもべであるクララに感じます。

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